2006年5月 6日 (土)

Scene 1

彼は最近になってブログに人間があまりこない事に落胆して、どうにかこうにか人を集めようと案を練っていた。毎日冗談とも本気ともとれる奇怪な文章を書いているだけでは人が集まらない。自分の書いている事はただ何時に起き何時に寝たっていう程度のものかしら。生活習慣の記録を誇大に書き綴っているだけかしら。などと、ある程度真実に近い自覚を起こしたのであった。

その自覚は戦慄に似た恐怖を男に与えた。恐怖は3日続き、その3日間といえばなんとも悲愴なものだった。著しく情緒不安定になり、何か少しの事で、例えば音の一つが気に入らないというだけで、大興奮を起こして憤慨したりするのであった。被害者から『訴えようかしら』などと半ば本気で言われる始末であった。

そんな過酷な日々の最終日、真夜中近くに彼は最期の打算を勘定した。そして策をろうした。そこにいたのは、必死に人を集めようとする健気な彼であった。彼の策は、知っている小説家の名前を二三ブログに書き記すことだった。さも知り合いの如く書き記した。何百年前の小説家をネタに、集客を計ったのである。明日を願って彼はぐっすりと眠った。

昼前に目を覚ますと足早にパソコンに向かって、ブログをチャックした。カウンターをのぞき込む彼は輝かしい目をしていた。だが次の瞬間には輝きを失ってしまった。全くカウンターが回っていなかったのだ。昨晩の策はまさしく失敗したのである。彼は例えようもないほどにしょげかえり、何か卑屈な笑みを絶えず浮かべていた。

それから二時間後に彼は一つ二つの文章をブログに記した。それまでの間、彼はパソコンの前に座って、何かを検索していた。ヤフーの検索窓に『詩的求核』といれて。私は私でその詩的求核とゆう名は以前どこかの雑誌か、HPかで読んだことがある。少しその記憶について記してみよう。

詩的求核というのは『精神の断片』といった熱狂的な散文を書き綴っているらしい。彼は正体不明の自称物書きで、その書き物は連続しない物語性のない断章だった。記憶が定かではないが、彼は今でも生きていて、なんらかの文章を書いているらしい。私の個人的な感想だけれど、詩的求核っていう名前もなんとも意味深だと思う。

話が逸れてしまった。つい私まで肩に力が入ってしまった。戻そう。パソコンの前に座っている男は詩的求核の精神の断片をネットワークを使って捜し出そうとしたのだった。それを見つけるまでに2時間もかかったのだった。なぜならば、その文章はアンダーグラウンドの奥の奥に掲示されていたのである。誰も寄りつかない場所にひっそりと、その文章は残されていた。彼は今度はその詩的求核をネタに人を集めようとしている。盗作や著作権の問題を無視して、彼は投稿した。限りない微笑と期待をうかべて。

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